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巡り隊ぷち・巡りレポート ~笠間展を追う!~工房の扉から、新しい世界と出会う。  笠間工房巡り とみーチーム【前編】

2012年11月26日

技に感動!笠間工房巡り。うっちーチーム

こんにちは!巡り隊のうっちーです。
今回は、11月17日にあった Kasama Art Port工房巡りの様子をお伝えします。

今回の巡りは、とみーチームと私、うっちーチームの二つのチームに分かれて、
それぞれ新たな巡り隊員をひきつれての巡りを行いました。

わがうっちーチームのメンバーは、デザイン男子2人!
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同じ専攻の4年生、ぼぶ!
彼は大学1年の頃から、真壁で石匠さんと一緒に灯篭をつくったり、
石のことを知ってもらう為のワークショップ等を企画してきました。

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つづいて、くぼりんさん!
土浦出身の研究室の先輩で、バイクとメカに熱いお方です。

今日はあいにくの曇り空でしたが、
土浦と石岡を結ぶ朝日トンネルが開通した(11月12日、5日前!)ということで、
トンネルを抜けて山道を通って笠間へ向かいました。


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9:00  陶芸美術館、到着!

まずはとみーチームと一緒に、デザインフェア2012笠間展を見学します。
(この展示は11月18日を持って終了しました。次は12月1日からの東京展です!)

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今回のデザインセレクションにも選ばれているKasama Art  Portの説明をする
デザインセンター一ノ瀬さんととみー。

震災の影響で壊れてしまった登り窯を修復し、その修復した登り窯で焼かれた陶板がずらりと並んでいます。


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ここで朱印帳のデザインフェア笠間展のハンコをゲット!
くぼりんさんはモザイク巡り隊バッヂも付けてくれてます。やった!

展示では、今年のいばらきデザインセレクションに選定されたものや
茨城県内各地の工芸品が並んでいて、
巡り隊員たちは、茨城ってこんなことやってるんだ~、こんなものつくってるんだ~と
驚きながら見てくれていました。


展示を見終えて美術館の外に出ると、笠間工芸の丘の真正面にある登り窯の修復を行っている最中でした。

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この登り窯も震災によって壊れてしまい、確か去年の今頃はまだブルーシートがかかっていたような。

一段一段、崩れた窯の砂を取り払い、手作業でひとつひとつレンガを積み上げる作業はとても地道で大変そう。
ここも早く修復されるといいな。

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10:00   回廊ギャラリー門 到着。

デザインセレクションのカタログと朱印帳の配達もかねて、
芸術の森公園の丘を下ってすぐの回廊ギャラリー門へ行きました。

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ここでは、笠間で作品を作る作家さんの作品が、
その名の通り中庭を囲う「回廊」に沿ってずらりと並べられ、見るだけでなく作品の購入もできます。

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笠間でつくられた作品は、作家さんによってそれぞれ全く異なっていて、
そのことがこの回廊に並べられた作品たちを見るとよくわかります。
オーナーの方も親切で、詳しく作品について教えてくださるので、つくられた作家さんや作品のストーリーも垣間見ることができます。

ギャラリー門でのんびりして、工房巡りスタート!
このへんかな、いやこっちの橋越えたとこじゃない、と迷いながらなんとかたどり着いたのは、

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10:30 新田麻紀工房、到着!

まずはじめに、新田麻紀さんの工房へ。
新田さんは日本で2人しかいない石炭を使っての鍛冶をする職人さんのうちのひとりで、
どんな作業場なのか、興味津津で訪れました。

これからひとつつくってみますね、ということで作業の様子を見せてもらいました。

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火があかあかと燃える石炭の中に黒い金属の棒をいれる新田さん。
熱せられて赤くなった鉄の棒を取り出し、

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カン、とも、キンともいえない大きな音を立て、火花を散らしながら、
何度も何度も熱せられた部分を金鎚で叩きます。

すると叩かれた部分が形を変え、

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あっという間に一本の釘が完成!
使うのは独特の形をした台と、金鎚、楔だけで、道具は少なくて素朴。

単純なかたちと道具の組み合わせだとおっしゃっていましたが、
まだすこしあたたかい釘は手に持つとずっしりと重たく、繊細で、目の前でつくられていく様子は本当に感動でした。

作業を見ていて、熱した金属は熱そうなのに手袋もせず作業をしているのに気付きました。
「熱した部分をすこし冷やすのに水をすくってかけたり、あとは、金鎚をもつのに手が滑ったりするから、手袋は付けないなぁ」
新田さんのことばを聞いて、手も道具のひとつなんだなあと思い、真っ黒にすすのついた手が力強い印象でした。

感動しっぱなしで、すごいなー、いいなあー・・と言っていると、
せっかくだしもうひとつつくりますよ、と新田さん。え、ええ、いいんですか!!?

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今度は熱した金属の棒を、台から突き出ている角のような部分に沿って曲げていきます。

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もう片方も叩いて、

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S字フックの完成!
私のと、ぼぶのと、なんと二つも作ってもらってしまいました・・!(本当に優しい・・!)
仕上げにまだ金属が熱いうちに蜜蝋をジュッジュッと塗りつけて、さび防止のコーティングをしてもらいました。
ほんのり甘い匂いが漂うフックには金鎚で叩いた跡が残り、作ってもらったんだという実感が。
ぼぶはこれにジーンズを引っかけて壁にディスプレイするそう。
私は何に使おうかなあ。大切にします!

ありがとうございましたー!とお礼を言って、お昼を食べに笠間稲荷の方へ。

12:00   おひるごはん

雨が降り出して一気にさむくなったので、
あったかいの、あったかいの・・と言いながらお店を探すと、店の前に置かれた小さな看板に、

「けんちんうどん」

これだー!
迷わず入って3人そろってけんちんうどんを注文します。

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具だくさーん!あったまるー!
一緒にそば団子も注文して、おなかいっぱいです。

笠間稲荷神社

少し商店街をぶらぶらして、日本三大稲荷のひとつである笠間稲荷神社へ。

ちょうど菊祭りをやっていたということで、菊はもちろん、米や繭などの品評会等も同時に開催され、
たくさんの人でにぎわっていました。

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お参りもして、

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おまんじゅうも食べて、
(ふくふくまんじゅうって、名前が!可愛いすぎる!)

さあー工房巡り再開。
ナビでは道なき道を進んでいて少し不安になってきたところで、それらしい建物発見!

13:30 N.ceramic studio 到着。

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額賀さんの代名詞にもなっている「プリーツワーク」のシリーズは、
笠間焼のルーツにもなっている信楽の土と、笠間焼の伝統的な技法である白泥掛け等をもとに作られています。
プリーツというのは、器の線上に彫ったしのぎの装飾を洋服のプリーツと見立てていて、
このしのぎも、器に合わせて様々な幅を彫る為の道具が使われているそうです。




額賀さんのつくった器で、お茶とお菓子をごちそうになりながら、いくつかおしゃべりをしました。
お菓子は乳製品を使わず、果物やナッツのざくざくした触感が特徴的で、
噛めば噛むほどあじわいがあるんだよ~と額賀さんがおっしゃっていた通り素朴な甘みがあっておいしかった~。

恥ずかしながら、私たち3人は焼き物について全く詳しくなく、
そんな私たちにも、笠間焼が滋賀県の信楽焼をルーツとして200年の歴史があることや、
土のちがい、焼き方のちがいなど、本当に詳しく丁寧に教えてくださったことが印象的でした。

額賀さんのお話をきいて、色んな伝統的な技法とか歴史の上に、
今の様々な作家さんの作品があるんだな~としみじみしながら聞いていました。

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他にもたくさんお客さんがこられたので、工房と作品を見せてもらう事に。

まだしのぎの作業途中のものや、様々な道具が並べられていて、壁には土のしぶきがぱっと散っていたり。
当たり前だけど、鍛冶の新田さんの工房とはまた違った作業場や道具で、
こうした作家さんの違いも見れるのは笠間工房巡りならではだな!と思いました。

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話を聞いてるとだんだん欲しくなってきちゃったぼぶ。
ひとつひとつ焼き具合や模様の感じが違うので、
こっちか、いやそっちか、これはコーヒーだ、ほうじ茶だとかぶつぶつ言いながら、
でもにやにやしながら選びます。
これも作家さんの工房だからこそできる、ほんとに贅沢な時間!

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ちなみに彼はこのカップを買ったそう!
はじて自分で作家さんの器を買ったらしく、このあともルンルンしてました。


だいぶゆっくりお話を聞いたりしたので、16時の工房巡り終了まであと時間もわずか!
最後にもう一度陶芸美術館の方へ戻り、田山陶房へ!

15:00  田山陶房、到着。

車で到着すると、出迎えて下さった田山さん!
まだやってますかー?と聞くと、暗いけど工房の中案内しますよーとお返事が。
お願いしまーす!

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工房はいくつかの部屋に分かれていて、それぞれ土をこねて作品を作るところ、
釉薬をかけるところ、窯のある部屋と小さなドアで仕切られていました。
田山さんの工房は、新田さんや額賀さんのところよりも古い様子で、
建物も、道具も、代々受け継がれて使っているのだなあという感じがしました。

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写真は粘土を練って棒状にする機械で、
ビニールがかかっているところから練られて出てきた粘土を、
円の部分についている細いワイヤーで使いやすい大きさに切り分けるそうです。

田山さんの工房には、電気を使う電気窯や、灯油を使った窯、そして登り窯の3つの窯がありました。

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これが電気窯を開けたところ。
電熱線が内部にびっしり付いています。
これに作品を置く為の板を何枚か入れて、焼くそうです。
こちらは電気を使うのでできあがりにムラがなく、均一に仕上がるそうです。

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続いてこちらは灯油を燃料とする窯。
こちらは作品を置く場所によって火の大きさや強さが異なるので、
できあがりに変化が現れるそうです。
作品を入れて丸一日焼成に時間がかかるので、火の調節などで人がつきっきりになるそうです。
焼きあがりまで人の手が必要なんですね~。

登り窯も見せてもらったのですが、写真を撮り忘れました・・。
こちらは震災で崩れて使えなくなってしまい、
今は他の場所で色んな作家さんと共同で使っている窯があるそうです。

登り窯はもともと頻繁に使うものではなくて、
松の薪を使って4~5日程かけてつきっきりで少しずつ火を大きくしながら、何人もの作家さんで一緒に使うものなのだそうです。
なので自然と飲み会が始まり、わいわい楽しくやっているそう!

けれど最後に追い込みといって、一斉に何か所もから薪を入れてどんどん火を大きくする作業がある為、
その最後の1日だけは全員で息を合わせてやらないといけないそうです。
まさに信頼する職人同士の仲だからこそできるんですね。

さいごに今回のKasama Art Portの活動のきっかけになっている
久野陶園にも見学に行きたかったのですが、ここで時間が終わってしまった為断念・・。
登り窯、見たかったなあ。

16:10 Cafe R hana 到着。

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雨だったせいもあって真っ暗ですねー。
最後にとみーチームと合流してCafe R hanaでゆっくりお茶をしながら
今日の工房巡りの感想をシェアします。

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かわいい器にちょこんと乗ってでてきたのは、ベイクトチーズケーキとコーヒー。
色んなものを見て、聞いて、楽しかったけど少し疲れたからだにほっとする甘さでした。

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最初はまずそれぞれ、自己紹介と(今更!)ゆる~く工房巡りをしての感想をひとことずつ言っていたのですが、
誰かの言葉に対してだんだんと議論がはじまっていき、
白熱した討論に・・!

作家と職人、デザイナーの違いについて、や、
ギャラリーで売ることと、作った人から直接ストーリーを聞いてものを買う事、
器は"アート"ではなく"暮らしの道具"だということ、
黙々と技術を磨くことと、そのことをちゃんと人に伝えること・・・など

今ここで書くだけでも見た人が色々な解釈のできそうな、
けれどいくつかの工房を巡って素直に感じた事などを分かち合えたかなあと思いました。


最後に、今回の工房巡りに参加してくれた2人が、それぞれ感想文を寄せてくれました!

まずはぼぶから!

「最近ではさまざまなところでクラフトフェアが開催されるようになりました。
実際に制作した作家さんと顔を合わせ、コミュニケーションを取ってから
作品を購入することがしやすくなりました。
しかし、今回の工房めぐりでは、それらとはまた違う、より深いレベルで
作品や制作過程、そして作家さんについて知ることができました。
制作の現場に足を運べることは大変幸せなことだと思います。良い経験をすることができました。
工房を見学させてくださった作家に皆様、そしてこの企画に誘ってくれた巡り隊に感謝したいと思います。
ありがとうございました。」


つづいてくぼりんさん!

「私は今回の工房巡りで陶芸美術館だけでなく、いくつかのギャラリーや作家さんのもとを訪れました。
陶芸が苦手という先入観があったせいか、少し緊張しながらの旅でしたが、
意外にもその緊張は最初に訪れた「回廊ギャラリー門」で払拭されました。

私が抱いていた焼き物への苦手意識は、その自分の専門領域との関係性の希薄さや、
どれも同じに見えてしまう表情の乏しさにありました。

しかし実際には作品から、形の問題より先に日常の生活を豊かにしたいという温かい想いが伝わってきました。
こうした価値観は表現の手法は違いますが、プロダクトデザインの原点とも言える視点です。

また、思っていたより表現の幅も広く、手作り感あふれる素朴なものから
スタリッシュでシンプルなものまで様々でした。
つまり見る人を飽きさせない表情の豊かさがあったのです。
工房巡りを通して、今まで遠い存在だと思い込んでいた焼き物が、急に身近な存在になったような気がしました。」


artport








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